第一章 闘病編 ~急性の精神病~ 5
「え!?もうここを出ないといけないの?居心地よかったのに残念だなぁ」
「大学には休学届けを出されてますね?今は12月ですから、春まで自宅で休まれるのはどうでしょうか?」
「雄志、どうする?」
父が聞いてきた。
「どうしたらいいのかわからんわぁ・・・。どうしよう。」
雄志は返事に戸惑った。まだ自分で判断できるような状態ではなかった。どうしたらよいか、わからないし、考える気力も落ちていた。結局、両親の意向で退院することが決まった。
「中林さんにお礼を言ってくる」
「雄志が『兄貴』と慕っていた人やな」
雄志は中林さんが来るのを待った。
「雄志君、退院おめでとう、元気でな、またどこかで会おう、僕は正看護師目指して頑張るよ」
「兄貴・・・(涙)」
兄貴は手を振りながら雄志が病院を後にするのを見送ってくれた。
2000年(平成12年)12月 雪のふるなか、荷物を抱え雄志は退院した。
「現実に引き戻された気分がする・・・。」
東京から大阪へ向かう新幹線の車中でそう感じながら雄志は静かに本を読んでいた。小田原を通過したあと、富士山を見つめようとしたが、残念ながら曇って見えなかった。
「成長と葛藤を繰り返した学生時代もひと休みになるのか。」
雄志は第二の故郷を離れることを少し淋しく感じた。